「Cahier de Romi」3回目のお相手は陶芸家・アーティストの鹿児島 睦(まこと)さんをお迎えして、現在romi-unieで開催中のイベント「鹿児島 睦とromi-unieのお茶とお菓子の時間」で手掛けていただいた桐箱やギフトBOX、クッキー缶について、romi-unieとのかかわりについてお話しいただきました。
写真 小禄慎一郎
新緑に包まれた連休明けの5月、鎌倉のRomi-Unie Confitureに陶芸家・アーティストの鹿児島 睦さんをお迎えしました。福岡で活動している鹿児島さんが、鎌倉のお店を訪れるのは今回が初めて。イベント期間中は、鹿児島さんとromi-unieのコラボレーション商品やグッズが一同にそろい、店内はいつもより少しにぎやかな空気に包まれています。
この日は、白いペンを持った鹿児島さんが、店のガラス窓に猫のイラストを即興で描く一幕も。突如として店に現れた招き猫は、今回のイベントのもう一つの見どころになっています。
romi-unieのお菓子を桐箱に詰めたら…
鹿児島さんとromi-unieがコラボレーションでクッキー缶をつくったのは、2016年、台湾で開かれた鹿児島さんの個展が最初でした。そこからコラボレーションは続いて、2021年には豪華な桐箱セットも誕生。そのきっかけをつくってくださったのも鹿児島さんでした。
ろみ ようこそ鎌倉へお越しくださいました。お店にお越しいただくのも初めてですが、鎌倉に来られること自体、初めてだったんですね。
鹿児島 個展のときくらいしか遠出をほとんどしなくて、福岡にいるときでも、2週間一歩も家から外に出ないこともあるんです。
ろみ 確かに創作の時間が膨大に必要ですからね。描いて、彫って、焼いて、すべて手仕事だからものすごい仕事量になりますよね。
鹿児島 うちには、弟子にしてくださいという人がいままで1度も来たことがないんです。だから自分一人でつくるしかない。
ろみ なのに、今年に入ってからromi-unieのためにフェアリーテイル缶やサブレ型、オリジナルのマグカップまで、次々に素敵な作品を描きおろしてくださってありがとうございます。
ろみ 鹿児島さんとは去年、伊勢丹のギフトサイトMOO:D MARK(ムードマーク)で桐箱入りのセットを一緒につくらせていただきました。はじめてのことだったので完成するまでドキドキで。
鹿児島 桐箱は陶器を入れる箱として陶芸の世界ではとても身近で、お菓子の世界にも桐箱があったら、安心するお客さんがいるんじゃないかな、と思って提案させていただきました。洋菓子を桐箱に入れて贈ることって、滅多にないですよね。
ろみ 言われてみると、確かにそうかも。
鹿児島 たとえばおじさんが、romi-unieのお菓子が入った桐箱を風呂敷に包んで訪問先に持って行ったら、すごくかっこいいな、と先にそんなイメージがあったんです。
ろみ 贈り物のシーンから桐箱につながったんですね。
おすすめのマイバッグは「風呂敷」
鹿児島 贈り物には意外性も大切ですよね。桐箱に和菓子は当たり前だけど、風呂敷から桐箱が出てきて、しかも桐箱を開けたらショートブレッドとかサブレとかコーヒーが出てきたら、わぁっと思いますよね。
ろみ 最初のころにつくった、マロングラッセとお花をモチーフにした紅白のショートブレッドがずらりと並んだセットも、大人の贈り物という感じでカッコよかったな。今回、桐箱にはサブレ2種(プチ・パレとサブレ・テ・フルール)とレモンケーキに、オリジナルブレンドのコーヒーと紅茶を詰め合わせました。
鹿児島 贈られた方は、お茶の時間が待ちきれないと思います。
ろみ 鹿児島さんのイメージした贈り物の光景が、どこかで繰り広げられるといいなー。
鹿児島 マイバッグには風呂敷をおすすめしたいですね(笑)
中世のイメージから導かれたフェアリーテイル缶
「本当は風呂敷もオリジナルでつくりたかった」という二人。しかし、つくりたいものがありすぎて、泣く泣くあきらめたそうです。次は、風呂敷から一転して、ロマンチックな世界が広がるフェアリーテイル缶のお話です。
鹿児島 フェアリーテイル缶は、色がきれいに出ていてびっくりしました。原画は水彩絵の具で描いているんですが、水彩は発色がいいので再現が難しいんです。赤とかピンクは特に出にくい。
ろみ 缶の業者さんが、色指定を数字でもらうより、原画を見たほうが再現できるというので、そのままお渡ししたんです。
鹿児島 今回、わたしは原画だけ描いて、エンボスなどの加工については、プロフェッショナルの方が判断されたほうがいいと思ったので、おまかせしました。エンボスの高さはいくつか段階があって、遠近で決めてくださっているんでしょうけど、本当にプロの仕事はすごいなと思いました。印刷でも違うことがあるのに、缶でここまで再現性があるとは。むしろよくなっている(笑)
ろみ 原画を最初にいただいたとき、あまりにもロマンチックだったのでみんなでわーっと湧きました。植物柄や動物の絵柄とは違って、今度のは物語性がありますよね。
鹿児島 ろみさんのお菓子を食べるといつも中世のイメージと重なるところがあるんです。現代のテクニックはもちろん取り入れられていると思うんですけど、基本は粉とバターとはちみつでつくっていた中世のころとまったく変わらない雰囲気があって、そこから昔話のワンシーンのように空想を広げていきました。
食べたあとも長く使えるよう、いいものをつくりたい
ろみ クッキー缶は昔から、ずっと家の何か入れになっているじゃないですか。書類入れとかボタン入れとか。そういうのってやっぱりいいなと思っていて、長く使われるものだと思うと、いいものをつくりたいと毎回思いますね。
鹿児島 わたしも、お嬢ちゃんが、「ママのこの箱ちょうだいね!」とか言いながら、お母さんが裁縫道具を入れていたのをもらって、自分のおもちゃとかアクセサリーとか大事にしているものを入れて、そのうちキズがあちこちについて、擦り切れていく感じも想定しながら描きました。
ろみ これだけ深さのある缶も今回が初めてでした。
鹿児島 サビが浮いたり、凹んだりしてもそれらしくなるといいなと思います。
缶の中にも、物語の続きが
ろみ フェアリーテイル缶に合わせて、うさぎ(Bunnyバニー)と熊(Cubカブ)のサブレ型もつくっていただきました。
鹿児島 前回が仔犬(Puppyパピー)と仔猫(Kitten キトゥン)で街にいる動物のイメージだったのに対して、今度はもうちょっと郊外にいって里山くらいのレベルにしようと思ってうさぎと熊に決めました。
ろみ 蓋を開けると、ここから森の友達が出てくるという展開もいいですよね。表情もいい。
鹿児島 うさぎは耳が長いので、ふたつに分かれていると抜けにくいし折れやすい、発送もしにくくなるので、つなげてシルエットにして、溝で分けました。熊も顔をまん丸にすると耳をつくったときに割れやすいかなと思って、横につぶしています。
ろみ 今回は口や耳の溝の深さまで、細かく指示を入れてくださっていましたね。
鹿児島 エッジが立ちすぎると欠ける原因になるかなと思ったので、なるべくなだらかな溝になるよう、両端は浅く、中はだんだん深くと差をつけてみました。パピーとキトゥンのときは溝がすべてフラットなので、そこは前回と少し変えたところです。
ろみ 実用性もありながら、かわいさもあって、鹿児島さんとのコラボは毎回楽しい!
ちょっと贅沢なフェアリーテイルボックス
イベントでは、鹿児島さん渾身の植物柄を箔押しした紙箱の「コーヒータイムボックス」と「フェアリーテイルボックス」も登場。クリーム色の箱に白で箔押しした「フェアリーテイルボックス」は、かわいさも秘めながら、どこか神聖な雰囲気に包まれた特別なボックスに仕上がりました。
ろみ フェアリーテイル缶と一緒に箔押しのボックスもつくりました。これは、もともと鹿児島さんがテキスタイルと家具の新作を発表されるというタイミングに合わせたものだったんですよね。ここで再び話が盛り上がって、素敵なものがいろいろ出来上がりました。
鹿児島 想定していたよりも、増えていませんか?
ろみ 「缶はエンボスもできますがどうしますか?」 とか、「箱はプリントだけでなく、箔押しもできますがどっちにしますか?」とやりとりしていると、つい、つくりたいものが増えちゃうんですよ。クリーム色の箱に白の箔押しをした「フェアリーテイルボックス」は1段と2段の2種類つくりました。2段のほうは、胴の側面にも箔押しが入ってちょっと贅沢。
鹿児島 とてもきれいに出ましたよね。あまりによくできていたので、デザイン専門誌に、この箱のことを話したらすごく興味をもってくれましたよ。
ろみ 一緒に箱をつくっている業者さんも、毎回楽しみにしてくださって、すごく素敵なものができましたね、と喜んでくださるんです。今回もそうやってみんなに愛でられながら作られてきたので、これはもう鹿児島さんとコラボしたものを一同に集めて、うちでもバーンと盛大にやらなければ!とイベント屋の血が騒いでしまって。で、やりました。
鹿児島 陶芸って一人でずっと作業して、完結してしまうところがあるのでとても孤独な仕事なんです。個展で買っていただいても、そのあと、その方がどんなふうに使ってくださっているのか、それとも飾ってくださっているのか、フィードバックも見えないので寂しい。ろみさんのところは手分けして、大勢でつくっておられて、その工程自体もうらやましいです。
romi-unieのアトリエ社会科見学
ろみ 今日、はじめて製造のアトリエも見ていただきましたね。いかがでしたか。
鹿児島 なぜこんなにホームメイドのようにいつもおいしいお菓子やジャムになっているのかな、と思っていたのですが、人が手でつくることを基本にされているからだということがよくわかりました。パッケージの作業も、機械はお使いになっていますが、ひとつひとつ手で並べていらっしゃって、機械任せではありませんでしたね。ケースにぎっしり並んでいるサブレを見て、これからこれを全部手で? と思ったら、枚数を聞かずにはいられませんでした。
ろみ 大人の社会科見学みたいでしたね。
鹿児島 はい。ジャムのアトリエも見せていただいて、銅鍋で1回煮ると何個ジャムができるんですか? とか、鍋の手入れはどうしているんですか? とか、つい質問したくなる。これだけの量をたくさんのスタッフとつくっておられるのに、常に変わらない味を届けていらっしゃるのは本当に稀有なことですよね。
ろみ ありがとうございます。来ていただけてよかった。
鹿児島 ほんわかしたかわいさがありながらも、みなさんプロフェッショナルで、毎回わたしも学ぶことが多いです。
ろみ 振られるスタッフはたいへん(笑)。でも一緒に特別な物をつくる過程にいるということは、みんなにとってもいい機会なんじゃないかな、と思うようにしています。
鹿児島 わたしもたくさんの方と一緒につくれて、箱のメーカーさんまでそんなふうにおっしゃってくださるというのを聞くと、いい仕事をさせてもらえて幸せだなって思います。
ろみ 素敵なものをまだまだたくさんつくって、また台湾にも行きましょうね。
鹿児島 睦さんプロフィール
陶芸家・アーティスト。
1967年福岡県生まれ。インテリアショップに勤務後、2002年より福岡市内のアトリエにて陶器の制作を開始。現在は、東京、大阪、ロンドン、ロサンゼルスなどで個展を開催するほか、版画やファブリック、壁画の制作、アートプロジェクトへの参加など活動の幅は多岐にわたる。
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「鹿児島 睦とromi-unieのお茶とお菓子の時間」
■鎌倉 Romi-Unie Confitute
■学芸大学 Maison romi-unie
開催期間 | 2022年5月9日(月)~6月9日(木) |
開催期間 | 2022年5月4日(水・祝)12時~6月1日(水)12時入荷分まで |
在庫更新日 | サブレ缶先行販売(全1回) 5月4日(水)12時入荷 → 5月11~13日発送 全アイテム販売(全4回) |
注意事項 | ・販売開始日時になるとSold out表示が「カートに追加する」に変わります。 ・入荷日ごとに明記された日程で発送いたします。(時間帯指定は可能、日にちの指定は不可となります。) |
※イベント終了後も一部商品は引き続き販売いたします。
※予定が変更になる場合もございます。